山口路子のMODEな軽井沢
毎週月曜日「プチ・ファッション・コラム」 毎週金曜日「今週の軽井沢エトセトラ」
ジャングルのミー、ポップぱんつ、青の瞬間★
December 26, 2008
★ジャングル! それはワンダーランド。
ジャングル! それはドリームランド。
はい、現在小学4年の娘と、その周辺の子どもたちにとって、という意味です。
ある日娘が言いました。
「ママ。お金がたまったから、ジャングルに行きたい」
娘は「マッサージ屋」を開業しており、足もみ10分10円とか、そんなかんじで、私をお客に日々頑張っています。
ときどき、「肩もみ5分無料券」をくれますが、使うと嫌がります。
ところで。
散りも積もれば山となります。
そんなこんなで、欲しいものに手が届くお金を貯めたので、ジャングルに行きたい、というわけです。
欲しいもの。
それは「ミー」の衣装ケースでした。
普段はあんまり着ない洋服をしまっておいて、旅行の時は着替えを入れるのです。
ちなみに、写真手前は、水筒ケース。ちょっと前にあることがあり、私がプレゼントしたものです。
ムーミンの登場人物のひとり、「ミー」シリーズ。赤と緑の鮮やかな色合いがたまりません。
私も好みです。
それから、数十分かけて、娘はえんぴつを選びます。「60円のをね」と私に言われて、100円のを返しに行く娘。
消耗品について、自分の意見を述べる私。
基本は、無地の一番安価な一ダースえんぴつ。たまには、お遊びも必要ということで、許容しているのですから。よろしくね、娘ちゃん。
★フラワーキッズファクトリーにちょっとだけ立ち寄りました。
「うわあ、かわいいねー」と娘が声をあげたのが、これらのレインシューズ。
「いまはいているのが小さくなったら、また、ここ来ていい?」
と目を輝かせる娘に、
「うん、そのときは、違うのになっているけどね」と言い、「わかってるよっ」と反抗的な返事をもらうわたし。
さて、こちらはなんでしょう?
はい、そうです。ぱんつ、です。
このようなものを欲しがっているうちは、まだまだだわね、と意味不明に
大人の余裕を見せたくなるハハでありました。
学校が終ったあとで、寄ったので、帰るときは、まっくら。
娘のお気に入りのブルーのイルミネーションが美しく、つい車を降りて写真を。
娘、携帯の画面を見て、
「ぜんぜん、この綺麗さが、撮れていないね」
「うん、でも、いいの。写真って、ぜったいに実物以上には撮れないんだから。
どんな天才写真家だって、そうなんだから。
私が今、このイルミネーションを撮ったのは、この美しい一瞬を切り取りたかっただけなんだから。
ふたりでプリンスに来て、いい気持で買い物を終えて、あなたはイルミネーションを美しいと言い、私も思った。その瞬間をね、撮ったの」
「そんないっぱい言わなくたってさあっ」
と娘は言いました。
語彙不足だから表現しきれなかったのでしょうが、たぶんこういうことでしょう。
「ったく、理屈っぽいんだからっ」
悪かったわね。でも、ブルーのイルミネーションは、この瞬間、ほんとに美しく、胸に染みたのでした。
セルジュ・ルタンス、圧倒的な美の世界◆
December 22, 2008
「フランスの知性、哲人」と称されるアーティスト、美の創造者、セルジュ・ルタンス。
クリスチャン・ディオールで活躍し、1980年から20年間資生堂のイメージクリエーターを務めたひと。
3年前、2005年に資生堂ギャラリーで、「セルジュ・ルタンス―夢幻の旅の記録」と題された展覧会が開催されました。
これを見逃したことを、私は激しく悔やんでいるのですが、それほどまでに、彼の創り出す世界は、卒倒するほどに、「美!」です。
(葉のレースを纏う女性 「レース Dentelle」1995)
20年くらい前に流れていた資生堂、インウイのテレビCMを、いま観ると、芸術は古びないのだということがよくわかります。
(メイクからセット撮影にいたるまで、すべて、セルジュ・ルタンス!!!)
つまり、セルジュ・ルタンスがここで創り上げたものは、価値ある芸術作品。
メイクという、ファッション以上に、モード(うつりゆくもの)なものが、なぜ、ここまで美しいままなのか、愕然とするほどです。
20年前の自分のメイクはもちろん、雑誌のモデルさんたちのメイクを振り返ってみればよくわかります。それは「ぷ」と、ふきだしてしまうほどに、むかーしのメイクでしょう。
*ユーチューブにて「資生堂インウイ」で検索すると、セルジュ・ルタンスの美の世界を堪能できます。
さて。
あふれる情報、おしよせる仕事の波のなかで今回、セルジュ・ルタンスに思いがけずふれたのは、「シュプールリュクス 第10号」の特集記事によります。
ほんとうに、リュクスな香りたっぷりのこの雑誌、友人から借りたのですが(買いましょうね、私)、ルタンスに関する充実の記事に瞠目でした。
10年かかって完成させた香水「セルジュ ノワール」についての伝道目的とはいえ、ルタンスワールドを堪能できますからおすすめです。
香水の名前のこともあり「ノワール=黒」が中心なのも、好み。
「黒はまず第一に、美しい色、誠実で永遠の色。そしてすべての色の生みの親です」
「私にとって黒は単なる色ではなく、内面の感情を表すもの。私のモノの見方自体がノワールなのです」
「黒は最もナチュラルな色だとおもいます。
モードでもパーソナルでもスタイルでもなく、私にとっては最もパーソナルな世界。黒がもつ本質、絶対性に惹かれます。
……俗世界やあいまいさに“ノン”と言うきっぱりした姿勢がノワールなのです。
それは過激な基準かもしれません。しかし私はそのような意味、解釈での“ノワール”の世界に生きているのです。私自身が“ノワール”を体現しているのだとも言えるでしょう。私は黒によって助けられ、守られ、定義され、そしてつくられたのですから」
はい。このなかで私のなかに、重みを持って響いてくるのが、このくだり。
「俗世界やあいまいさに“ノン”と言うきっぱりとした姿勢がノワールなのです」
クローゼットに黒い服が、また増えてしまう……。
次、いきます。
「夜空を見ると、黒の美しさが見にしみます。“ノワール”という響きも詩的だと思います」
この言葉なんて、軽井沢の住人としては、こころから頷けることでしょう。
世界の底のように真っ暗な空……、そんな夜がありますものね。
最後に、以前から私が大切にしている言葉を。もちろんbyセルジュ・ルタンスです。
―――「美」というものは希少さを望んでいるのです。
男性に好かれる靴、女性に評価される靴★
December 19, 2008
★こんな暗めな年末でも、ある種の人々の間では、華やかなるパーティーは健在です。
「もちろん、ドレスもバッグも欲しい。でも、いま、一番切実なのは靴!」
という友人とプリンスに行きました。制限時間は一時間(私が)。それから低予算でなんとかっ(友人が)。ということで、ニューウエストの三つのお店を巡りました。
★まずはリプレ ヨーク テラスへ。
私、一昨年、昨年と続けてロングブーツをここで買っています。とても気に入っています。グリーンの一足、ゴールドの一足。
さてさて。まずはこちらのエナメル、ブラックはいかが。
友:「パーティーなんですけど」
私:「レーシーなブラックドレスに、レーシーセクシーなストッキングに、これよ。最高にクールだと思うけど」
友「ずいぶん無理してない? レーシーとかクールとか、貴女らしくない言葉が……」
私:「モードっぽいかな、って思って」
友:「ふつうでいいよ、ふつうで」
私:「……」
これなんか、いかにもパーティーっ、ってかんじ。ゴールドですから。
友:「ひかえめな輝きがいいかも」
私:「つま先の空き具合が、どうかなあ」
友:「ゴールドのペディキュア塗ってヌーディーな色の網ストッキングをはけば」
私:「ゴールドというと、ついシルバーを合わせたくなるのはなぜ。私はシルバーのネイルにシルバーのアミアミがいいなあ」
★ナインウエスト/ソール アライアンス、こちらは私初めてです。
友人、ウインドウ越しに、こちらのシューズに引き寄せられました。写真が下手すぎて残念ですが、黄色いエナメルがきいています。バッグと合わせて飾られているので、インパクト大です。
友:「これは、ドレスを選ぶというか、ドレスをシンプルにしないと、危険だ」
私:「あれは? 貴女、なんちゃってヘビ皮のミニワンピース、持っていたでしょ?」
友:「うん、持ってる」
私:「あれに合うよ、きっと」
友:「残念ながら、いま、ワンピが身体に合っていないのでムリです」
私:「おたがいに、かなしい年齢に突入……」
友:「気をとりなおそう、お互いに。 ねえ、これは? どう?」
私:「平均的な殿方には好印象、ってかんじ」
友:「それ、否定的見解?」
私:「いいえ。文字通りの意味よ。いつもの威嚇的なファッションではなく、たまには好印象を狙うのもいいと、本気で思う。私も、自分ではすっごくおとなしいなあ、って落ち込むほどのファッションであるパーティーに行ったことがあるけど、声をたくさんかけられたもの」
友:「いつものが、こわすぎるんだよ」
私:「……」
★こちらも、私、はじめてのお店です。フランドルテラス。
友:「あ、パープルのエナメル!」
友:「どこかの誰かさんが、○○のモードな軽井沢とかなんとかで、日本人にはパープルは似合わないとか言っていたよね」
私:「誰それ、性格悪そうなひとねえ」
友:「靴だったらいいんじゃない? 肌の色とは関係ないから」
私:「そうそう、そう思う。バッグ、靴、ベルト、なんかでパープルを使うのはすごく好き」
友:「あ、これもかわいいかも。ちょっと年齢層低めかな? リボンが」
私:「大丈夫だと思う。渋いエナメルブラウンだから、とっても、モードってかんじで。ただやっぱりこのての靴を履くときはドレスはミニ丈でお願いね」
友:「でも、これ、男ウケは悪いな、きっと」
私:「そうね、一般の殿方は、ノーマルなのがお好き。そうね、たとえば、こういうのが」
友:「品がある」
私:「なかにし礼が『恋愛100の法則』のなかで言ってたよ。
『足にきっちりと合った、いや、むしろ食い込んでいるような中位の高さのパンプスがいい。女から足をあずけられて、靴を脱がせる時、男がいささか手こずるくらいなのが希ましい。女に対する尊敬の念が一段と高まる』
友:「そこまでの意識を持っている男性を探してきてから言って」
私:「いるって。がんばろうよ、ふぁいと」
友:「なげやりに言わないで」
私:「……」
ソニア・リキエルを着たくなるとき◆
December 15, 2008
フランスを代表するデザイナー、ソニア・リキエルのデビュー40周年を記念して、はじめての回顧展が、パリの装飾芸術美術館で開かれています。
1960年代に、それまでは普段着としてしか認識されていなかったニットを、ファッショナブルに昇華させて、「ニットの女王」と呼ばれ、現在も、作家として音楽家として室内装飾家として幅広く活躍しています。
「私が創る服は流行にとらわれないデ・モード、脱流行の服なのよ」
自らそう言いきるソニア・リキエルの服は、ある種のクラシックとしての評価を得ています。
ソニア・リキエルのルックスは、かなり個性的です。削いだような頬、どこまでも広がる赤毛、黒いロングの衣装。
そんなソニアは「ナチュラル・ルック」を嫌います。
「つまり、自分自身をベストの状態にしなさいということ」
「ナチュラルでいられるひとなんていないの。ありのままでも素晴らしい、少数のひとたちを除いてね。けれど私は、パーソナリティをルックスに反映させている女性が好き」
もう、この言葉だけで、ソニア・リキエルのファンになります。
大好きです。
大賛成です。
(私は「とくになにもしていないの」的な発言をするひとと、ルックスにパーソナリティを反映させようとしないひとが嫌いです)。
もう少し、ソニアの言葉に耳を傾けてみましょう。
「自分の存在を主張するためには、女性は自分の色を持つべきです。私の場合、それが黒。……、私の個性を一番引き立ててくれる色と信じています」
黒は比較的誰にでも似合うと思われますか? という質問に対して、
「いいえ、そうはいきません、強い意志を持った個性が際立つ女性でなければ、上手に着こなせません。黒に負けない強い人でないと」
「強い人」。
ソニアはロシア系ユダヤ人家庭の5人姉妹の長女として生まれました。
4人の妹たちと比べて自分がきれいでなかったことが、強くて知的な自分を作った、と考えています。
「生まれた時、髪が真っ赤でとても醜かったの。母は私にこう言ったわ。
『やりたいと思うことはなんでもできるわ。でもそのためには、おりこうさんにならなくちゃだめよ』
私はかわいくはなかったから、素晴らしい人間になる必要があったの。
それからはそれを私の強みにしたわ。
私はとても強くて、周りのことなんて気にしなかった。
自分でこう考えていたの。
『私は強い赤毛の女の子。だから、私にかまわないで』ってね」
母の、おそらく、愛にあふれた言葉。真実の。
私は、この言葉を娘に言った時の、母親の気持と、それを言われた時の、娘の覚悟に、胸が熱くなります。
最後に、これまた、私自身がとっても共鳴する、甘い言葉を。
ソニア・リキエルが50代前半の頃のインタビューから。
「私がいちばん幸せを感じる時? そうねえ、愛する男がベッドを抜け出して、朝のコーヒーをいれてくれて、その香りで徐々に目が覚めていく時間かしら」
*ソニア・リキエル回顧展の情報はこちらからどうぞ
(参)「ヴィジョナリーズ」「世界のスターデザイナー43」
さく庵とミカドコーヒー、あるいは危険な午後★
December 12, 2008
★新そばを食べましょう、ということで、秘密の殿方とふたりで「さく庵」に行きました。
私はざるを、殿方は天ざるを。写真に映えるということで、天ざる写真を撮らせていただきした。
めずらしく暖かなお昼どきでした。
ところで、おそばについて、あれこれと言うのは、軽井沢についてあれこれ言う(言ってるけど)のと同じくらいに危険なことです。「通(ツウ)」な方々が、たくさん生息しておいでですから、通でない私は寡黙になることが肝要。
ただ、おそばをいただくとき、よく思い出すことがあります。
それは小説のワンシーン。中国人の女性と日本人の男性(ふたりはらぶらぶ)がおそばを食べることになります。
***
彼は大きな音をたてて蕎麦を食べている。日本人は蕎麦を食べるとき、音が大きければ大きいほど、その蕎麦が美味しいということを示すのだそうだ。
***
そして、日本人の男性は、四歳か五歳の頃、父親から教わった蕎麦の食べ方を彼女に教えます。
***
「まず、どんぶり全体の外観、みじん切りの葱が浮いたり沈んだりして漂っているのを見て楽しむんだ。それからひとくち汁をすすって、どんぶりを置く。口の中で注意深く、繰り返し汁の味わいを楽しみ、呑み込む。それから麺を食べる。麺の上にのっている肉は先に食べちゃだめだ。それもまず見なくちゃいけない。他の薬味を食べるとき、その肉を見なくちゃいけない。愛情を持ってね……」
***
というわけです。
こ、これは……、そうです。あたたかなおそばですよね、きっと。
蕎麦通の方が、邪道、というところの。
引用は「ブッダと結婚」(衛慧 ウェイ フェイ)講談社刊。舞台はニューヨーク。私にとってはすごく面白い小説です。
★おそばを堪能した後は、珈琲を飲みに、「ミカドコーヒー」へ。
旧軽井沢銀座、行列のモカソフトがあまりにも有名で、ツルヤ軽井沢店内に新店舗がオープンした時には、コーヒー豆を買う目的の人もモカソフト狙いの人も、とっても喜んだ(身辺情報網より)、というミカドコーヒーです。
さて、私はケーキセットで、コーヒーとモカロールケーキをいただきました。甘さ控えめでしっとりしていて好みでした。
おみやげで何度か喜ばれた経験のある、コーヒー豆。その名も「旧軽通り」っ。泣く子も黙るネーミングといえましょう。
それからお店の方がお勧めしてくださったのが、こちらのラスクです。
ごめんなさい、私、実際にいただいていないのですが(だって、モカロールケーキだけでおなかいっぱい)、美味しそうだったのでつい写真に撮ってしまいました。せっかくなのでアップします。
それにしても、珈琲。
これまた、あれこれ言うのが危険なしろもの。通(ツウ)がいっぱいです。
私はほとんど珈琲中毒ではあるけれど、珈琲通ではないのです。
ああ。
今日はおそばと珈琲の二本立てだなんて。とってもデンジャラス。
マノロ・ブラニクのジェスチャー◆
December 8, 2008
かつて、マドンナは言いました。「ステキよ。セックスより長持ちするの」
「私の脚は、彼の靴によって与えられたようなもの」。こちらはキャロライナ・ヘレラ。
「ものすごくセクシーでストラッピー。靴そのものが女のひとみたいなの」。サンドラ・バーンハード。
各国の、あらゆる世代の女性たちが、マノロ・ブラニクに情熱を注ぎます。彼の靴はファッション通の間では「マノロス」で通り、それは世界一高級でフェミニンな靴の代名詞です。
日本で「マノロス」(←思いきって使ってみましたが、やはり私はだめ、照れずにはムリ……)が一躍有名になったのは、アメリカのテレビドラマ「セックス アンド ザ シティ」の流行。
主人公の一人、キャリーが熱愛していたのが、マノロ・ブラニク。
正確ではないかもしれないけれど、キャリーが誰かに「あのサンダル……」と言われて、「サンダルじゃないわ、マノロスよ」と言い返したシーンが、あったように思います。
サンダルじゃないのです、パンプスでもないのです、そして、きっと靴ですらないのです。マノロ・ブラニクなのです。すごいです。
さて、マノロの靴を担当する職人たち(工場はイタリアにある)について、マノロ・ブラニク本人は次のように語っています。
「とても小さな集団なんです。彼らはああいった靴をもう200年も作り続けているんですよ。伝統的技術の最後のとりでであるひとたちに靴作りをお願いできるのはこの上ない幸せです」
この工場では、一日にせいぜい80足くらいしか作れません。そして、この伝統的技術によって、十センチ以上のヒール、流麗なフォルムであっても、一度履いたら他の靴は履けないとまで言わしめるほどの実用性をもつのです。そうです。マノロの靴は「世界で唯一走れるピンヒール」の異名を持つのです。
マノロ・ブラニクはチェコスロバキア人の父とスペイン人の母のもとに生まれ、カナリア諸島のサンタ・クルス・デ・ラ・パルマで育ち、六カ国語を流暢に操るそうです。
ファッション評論家からも絶大なる讃美を浴びせられても、彼自身はけっして満足しません。
「私は良いものを作ってきたし、使えるもの、使えないもの、最悪の作品も作ってきました。だけどすべてを記録にとどめているから、何を避けて通ればいいのかが分かるんです。いつだってものを省くようにしています。これもいらない、あれもいらないって。そのうち私の靴にはストラップくらいしかなくなるでしょうね。私はほとんど存在しないようなものが好きなんです」
さいきんでは、全編が砂糖菓子のような映画「マリー・アントワネット」の靴のデザインを担当しています。
マノロと言って思い出すのは、数年前の銀座です。
久しぶりに会った友達が、「これからバーニーズに行くの。靴の修理をお願いしに」と言いました。
バーニーズの黒い紙袋には、黒いマノロ・ブラニクが入っていました。
「踵が壊れてしまって。ウオーキング用じゃないのに、歩きすぎたのね」
と彼女は言いました。
「……走れるけど、がんがん歩いてはいけないのね。送迎つきの人生にふさわしい靴ということ?」
と私は言いました。
「少なくとも、タクシー代を節約するために歩こう、という人生にはふさわしくないでしょうね」
と彼女が言いました。
あのときの光景が今、とってもリアルに甦ってきます。
そして彼女の最後の言葉に、マノロ・ブラニクの言葉を重ねてあらためて共感するのでした。
マノロ・ブラニクは言っています。
「私の靴はファッションではない、ジェスチャーだ」
参:「ヴィジョナリーズ」美しいマノロはこちらからどうぞ。
プリンジャムと健康クレープ、アニエスのキッズ★
December 5, 2008
特にめずらしい主張でもないでしょうが、私は、誰かに何かを差し上げるときに「つまらないものですが」というのが嫌いです。これまでに何度か「伝統にのっとってやってみよう」と試みたことはあるのですが、どうしても言葉として発することができない。
また、お中元お歳暮関係もなじめなくてバツ。
ただ、「すっごくお世話になった」とか「じっさい、こちらの都合で多大なる労力と小額の金銭を負担させてしまった」等の場合は、やはり、御礼として「なにか」を差し上げたい。
その際、「これ、我が家では評判が高いんです」とか「私はとても美味しいと思うので」といった言葉を添えたい。さらには、「軽井沢からの贈り物よ、どう?」といばりたい。
……うだうだと、言っておりますが、ようするに、そういうものを買うために、「ヴェリィ ベリー」へ行きました。
お店の方に、「個人的に、本気でお勧めはどれですか?」と、失礼とも思える質問をし、今回選んだのは、この二点。
人気ナンバーワンの「プリンジャム」のスウィート(ほんとにプリンの味! ←当たり前ですが)と、国産の果実を使ったジャムの中から、「ゆず」。
これを○○さんに差し上げることにしましょう。
そして、ついでに「バームクーヘン」を単品で二つ購入。これは私と娘のおやつ用。(私たち二人とも、一番好きな甘味はバームクーヘンなのです。二番は、カステラ。どうぞよろしく)
★立ち寄ることの多い「アニエス ベー」。今回は、すごくめずらしく、キッズものに目がとまりました。
たぶん、これはコーディネイトの勝利。とても愛らしい雰囲気が出ていて、ひきつけられました。
どんなおてんば娘も、それなりに装うと、立ち振る舞いがそれなりになるものです(9年間観察済み)。
娘に着せてみたくなりました。ときには子のあるハハのように。
それから、ガラスケースのなかに飾られていたあるものに、目がくぎづけに。私、なぜか、がまぐち型に弱い。
がまぐち型のコインケースつきキーホルダー。
「なんだかとっても愛らしい姿ですね」とお店の方に声をかけると、にっこり笑顔で四色並べてくださいました。
★「ピッコラ ロトンダ」。
アイスクリームとクレープのお店です。
このクレープ、なんといっても生地が好き。ほろっと甘くて、もっちりしています。おなかがすいていた私は「ヘルシー野菜」をいただきました。
下の写真、二種類のクレープがありますね。
一つは私のヘルシークレープ。もうひとつはマロン。もちろん一人で二つ食べたわけではありません。一緒に行ったひとがいるのです。念のため。
ピッコラ ロトンダ。かわいい小さな丸い家。その名の通り、建物の形が◎です(こちらクリックしてください)。もっと、こういう遊び心あふれる外観のお店が増えたらいいな、と思います。
ピッコラのように、もし、これが森の中にあっても、目立つけれど周囲と溶けこむような、そんな建物が。
写真家リンドバーグとモードな名画◆
December 1, 2008
「ハーパース・バザー日本版 7月」に、美しい数ページがありました。
タイトルが「最新モードで甦る名画のミューズ」。
「トップブランドが、アートコンシャスなルックを打ち出した今シーズン。新作映画が話題の女優、ジュリアン・ムーアが名画のミューズをイメージして最新モードを着こなす」という特集でした。
「ミューズ」に関する本を2冊出している私としては、それだけでひきつけられて当然といえましょう。
ただ、たいていの場合、これ、人間のサガだと思うのですが、自分の得意分野や、好きなものを他人が「表現」するとき、どうしてもケチをつけたくなる、そういう心理があります。
(私のところにもしばしば、この「ケチ」っぽいものが向かって飛んできます)。テーマは、「絵画」、「映画」、「軽井沢」に関するものが多いです。この種のものには多大なるこだわりをもつ方々が多いのでしょう)。
しかしながら、この特集に、私はケチをつけるどころか、すっかり魅せられてしまったのでした。
グスタフ・クリムトの「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ」を意識した絢爛豪華なドレス、これはクリスチャン・ディオール。
さらにはエゴン・シーレの「座る女」を意識したシックなドレス、これはランバン。
他にもモディリアーニやドガなどが登場するのですが、すべてが、名画とはまた違った魅力に溢れていたのでした。
この魅力は、もちろんヘアメイク、衣装ほか、それからジュリアン・ムーアの力が結集して生み出されたものなのでしょうが、やはり、その瞬間を捉えた写真家の存在が大きい。
クレジットを見て、私は深く納得したのでした。
ピーター・リンドバーグ。ドイツのファッション写真家。
「あのピーター・リンドバーグ」
とか
「泣く子も黙るピーター・リンドバーグ」
などと形容される、超有名写真家です。ナオミ・キャンベルをはじめとするモデルを数多く撮影した、元祖スーパーモデルカメラマンでもあります。
「セックス・アンド・ザ・シティ」のスミス役で有名なジェイソン・ルイスも、今年はじめて彼と仕事ができたことがとても嬉しかったようで、
「世界的ファッションカメラマンであるピーター・リンドバーグと仕事する機会をあたえられた。彼の仕事ぶりはまさに魔術師と呼ぶにふさわしい!」
と言っています。
モードもファッションもうつろいゆくものだけれど、写真家が、ある一瞬を切り取ったとき、そこに美があれば、それは永遠に残る。
ピーター・リンドバーグの「ファッション写真」をいま、じっと見つめていると、「ファッション写真」などという分類が愚かなものに思えてきます。そして「ぼくは絵を描くように撮るよ」というマン・レイの言葉を、ふと思い出したりするのでした。
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