山口路子のMODEな軽井沢
毎週月曜日「プチ・ファッション・コラム」 毎週金曜日「今週の軽井沢エトセトラ」
ポワレのドレスが欲しい◆
March 30, 2009
花冷えの午後、目黒の「東京都庭園美術館」に出かけました。
「ポワレとフォルチュニィ 20世紀モードを変えた男たち」の展覧会が終了間近だったのです。
今回はポワレについて。フォルチュニィは次回、お届けします。
ポール・ポワレは「女性をコルセットから解放したデザイナー」として知られています。
ポワレが最初にコルセットを取り去ったのは、1906年10月でした。長女を出産したばかりの妻ドゥーニーズが洗礼式に臨んだときのドレス、それがポワレの革命の始まりだったのです。
「私がコルセットの追放をすすめたのは自由という名においてである」
「私は軽く、しなやかな生地で作った簡素なドレスが好きだ。それは動きにつれて、光と影を通しながら、まるで濃厚な液体のように、肩から足首まで、体の形をなぞる」
直線的なハイ・ウエストのドレス、ハーレム・パンツ、ランプシェードのスタイル、キモノ風コートなど、鮮やかな色彩、斬新な形の服を次々と生み出します。
ポワレは異国趣味がありました。
ロシア、ギリシア、北アフリカ、中近東、日本など、「非西洋」の衣装に触発されたのです。
さて。
庭園美術館のポワレ。
これはまったく、私個人の好みなのですが、感嘆の声をおさえるのが大変でした。
優雅なシルエット。美しいテキスタイル。
ポワレは女性を心から賛美できるタイプの男性だったに違いありません。
彼の服には、女性への憧れと、なにがなんでも美しくあってほしい、という願望があるように思います。
衣装そのものの他にも私の目を惹いたのは、イラストでした。
ポワレは才能あるアーティストを起用して、衣装カタログを作成するチャンスを与えています。
なかでもジョルジュ・ルパープのイラストは、色使いといい、線といい、これまた好みで、胸踊りました。
家に戻り、買ってきた展覧会カタログを広げて、娘と「このなかのドレス、どれでも一個あげるよ、って言われたらどれにする?」という、毎度の遊びに熱中しました。
娘が選んだのはこれ↓。
ハーレム・パンツとフープ入りのスカートを組み合わせたものです。おそらく仮装パーティー用に作られた「イヴニング・ドレス」でしょう。
私は迷ったあげくに、これを選びました↓。
マントのようなキモノのような「オペラ・コート」です。
***
「モードの帝王」と呼ばれたポワレですが、第一次世界大戦後の、機能性、合理性を追求する時代の要求とは相容れず、1929年には店を閉め、不遇の晩年を送りました。
ポワレの後(ポワレを葬ったともいえます)、モード界を率いたのが、かのガブリエル・シャネルです。
参:「ポワレとフォルチュニィ 20世紀モードを変えた男たち」展覧会カタログ
「軽井沢逸品倶楽部」★
March 27, 2009
プリンス、ニューイーストのレストラン「アーティチョーク」。以前に「チーズ・フォンデュ」でご紹介したことがありました。
このレストランの2Fのスペースに、期間限定のクラフトショップがオープンしたとのことで、早速(……でもないです。ちょっと遅かったですね……)出かけてきました。
「軽井沢逸品倶楽部」という、素敵なネーミング。開放的なスペースには、五人の創造者の作品が展示されています。
軽井沢にお住まいの方も、軽井沢に遊びにいらした方も、「軽井沢に工房をかまえる」作家の方々の作品に、ぜひ、触れてほしいと思いました。
3月20日からはじまり、3月29日の日曜日までの展示です。(11:30から15:00まで)
あとちょっとで終了してしまうけれど、次回の展示内容に、はやくも期待しています。
そのときはまたこちらでご紹介します。
お問い合わせ等は「軽井沢アート・コントラーダ事務局」まで。
こちらのサイトもぜひ、ご覧下さい。
軽井沢色の才能が結集、とてもすてきです。
↓クリック
ジョゼフィーヌとストール◆
March 23, 2009
春です。
桜の季節は、寒暖の差が激しくて、とくに軽井沢に住んでいると、それを体感……どころか「痛感」せずにはいられません。
そして全国的に「もっとも服装に困る季節」、それが春といえましょう。
というわけで、今日はジョゼフィーヌのお話です。
皇帝ナポレオン・ボナパルトの皇后ジョゼフィーヌです。
(↑「皇后ジョゼフィーヌの肖像」アントワーヌ=ジャン・グロ)
ナポレオンよりも6歳年上で、2人の子持ち未亡人、さらに他の男の愛人だったジョゼフィーヌ。彼女に惚れこんでしまったにナポレオンが熱烈にプロポーズして結婚。
このエピソードはあらゆる意味で古今東西の女性を勇気づけています。
最初はナポレオンの愛情がジョゼフィーヌのそれの何倍もあり、ジョゼフィーヌは浮気を繰り返すいけない妻でした。
けれど次第にこれが逆転、ジョゼフィーヌは貞淑な妻となりました。
すると今度はナポレオンが他の女に目移り、愛人マリアとの間に子どもができたこともあり、ジョゼフィーヌと離婚するのでした。
このエピソードは、いつの時代も、男女の愛情エナジーの法則は変わらないことをうったえています。
さて、ジョゼフィーヌといえば、薔薇。
たいへんな薔薇好きで、250種類もの薔薇を庭に植えていただけでなく、植物画家に薔薇の絵を描かせて記録に残しています。
そのほかにも、ジョゼフィーヌが熱狂的にもとめたものがありました。
それは、カシミアのストールです。
当時はギリシア風の服装(身体をしめつけないシュミーズドレスのようなもの)が流行していて、きっと寒かったのです。
だからストールが大活躍。
しかもカシミアの官能的な肌触り。いくら高価であろうと欲しい! ……その気持、いたいほどにわかります。
ジョゼフィーヌの肖像含めた三枚の絵をご覧ください。この時代のご婦人方がストールを愛用しているのが描かれています。
(↑「クリスティーヌ・ボワイエ」アントワーヌ=ジャン・グロ)
(↑「レカミエ夫人」フランソワ・ジェラール)
というわけで、「春だからジョゼフィーヌの話」→「春はストールがいいですよ」とつなげたいのです。
シワにならず、暑ければ手にもってもさまになり、羽織ればあたたかく、色彩のコーディネイトも楽しめる。それがストールなのです。
「デリフランス」と「旬粋」の、おいしいもの★
March 20, 2009
★デリフランス、巷(せまい交友範囲ですが……)で人気急上昇◎です。
人気の理由その①店内装飾が、スタイリッシュ。
人気の理由その②すばらしい眺望。ずっといたくなる。
人気の理由その③ボリューミーなサンドイッチ、これがめちゃくちゃ美味しい。パン生地だけでも味わえる。
人気の理由その④焼きたてパンがそのまま店内で食べられるお手軽さ。しかも美味しい。
人気の理由その⑤珈琲専門店ではないからと期待していなかったが、珈琲まで美味しかった。
というわけで、パン大好きな私としてはうずうずしていたのですが、ようやく出かけてきました。
三十二歳年下の女の子(誰)と一緒に、春休みのひとときを楽しんだわけです。
まずは店内で、パンを選びます。
マフィンとドーナツと、ちょっとかくれていますが、ブルーベリーのペストリー。
そして、サンドは、新しいメニューである「シュリンプ」をオーダー。
↓作りたてを席まで運んでくれるので、わくわくと待っている様子。
これが「シュリンプ」。
評判どおりに、フランスパンが◎で、美味しかったです。珈琲も◎。
私はマフィンがとっても好みでした。手作りの、なんだかとっても懐かしい味がしました。
★旬粋で、「自宅でお蕎麦を楽しむ」をコンセプト(というほどでもないですが)に選んでみました。
そば粉を買って、自家製のそばがきなどを作ります。
器も大切です。
いつものではなくて、こんなかんじのにしたら、それだけで、気分が盛り上がります。
蕎麦湯もいつもより味わい深くなりましょう。
(私はとろとろの蕎麦湯が大好き。何も混ぜないでそれだけで味わうのが好きです)
さらに、ときにはこんなカラフルなお蕎麦などもいかがでしょうか……。春だし!
……と、かなりいいかげんな調子で選んでいますが、「旬粋」は蕎麦グッズが豊富にそろっていて、眺めているだけでかなり楽しいです。
<おまけ>先日、どら焼き好きのお友達へのお土産に、さささと立ち寄りました。自分用にも購入して、食べたら、お、おいしい……。最後の一個、食べつくす前に、写真に撮りましたので、掲載します。
マダム・グレのエレガンス◆
March 16, 2009
秦早穂子さんの「おしゃれの平手打ち」は、正統なおしゃれ(というのがあれば、の話ですか)について知るにはとても楽しい本です。
ひとつのエッセイをご紹介します。
タイトルは「一枚のオートクチュールの服」。
マダム・グレにまつわるエピソードです。
マダム・グレ。
1930年代、パリのモード界に彗星の如く登場し、ひとつの金字塔を建てたファッション・デザイナー。
芸術的なドレープ、ケープなどがグレの特色のひとつです。
秦早穂子さんは、以前よりグレの服を、虚飾を排した、ごまかしがきかない服だと感じていました。
グレ本人に出会って、作品と人柄が一致していることに驚きます。
「流行を超越してしまった独自の美の世界は、彼女の生きる態度と同じなのである」。
「花は枯れていく時が、いちばんいい香りを出すものなのですよ」
秦さんは、このグレの言葉をしみじみと受けとめます。
そして、いつしか一度はグレの服を着たいという夢がわきあがります。
「服は絵ではない。見て感じればいいというものではあるまい。着てみなければわからない」。
秦さんはグレに手紙を書きます。
「お金持ちではありませんから、働きながらためたお金で一枚だけ作ってはいただけないでしょうか」
オートクチュールは型(ボディ)を制作することもあり、一年に何枚も作ることを前提としているから、これは常識はずれのお願いというものでした。
グレから返事がきました。
「昔、アトリエで働いていた人が結婚してやめる時に、一生懸命ためたお金をもってきて、服をつくってほしいといわれた時は、ほんとうに感動しましたよ」
やがてその一枚を手に入れます。
けれど、「自分で選んだ服なのに私の粗暴さが浮きたつばかりで、とても着こなせない」。
そんな秦さんにグレは言いました。
「エレガンスというのは服装だけではないのですよ。その人の心のあり方、行動、しぐさにも関係してくるのです」。
そんなグレの好きな言葉は、
「女は美しいものはつくるが、武器は造らない」。
秦さんにとってのグレは、この言葉を黙って実行し、「だから凛としていた」ひとでした。
秦さんはこのエッセイを次のように結びます。
「エレガンスの本質を定義するのはむずかしいが、重要な要素のひとつは、やさしさであるように思われる。ある種の哀しみである。だが、それは決してやわではない」。
マダム・グレと、一人の凛とした日本人女性のエピソードに、私は美を感じました。
そして今……。
なんとしても神戸に行きたいと考えています。
なぜなら、このようなものを発見してしまったからです。
4月16日より、「神戸ファッション美術館」で、「マダム・グレの世界展 究極のエレガンス」の特別展示があるのです!
こういうめぐりあわせにはいつもぞくぞくとします。
春だから、軽やかにバーゲン♪
March 15, 2009
もしかしたら、私のブログを「お気に入り」してくれて、トップページに立ち寄ることのない方々のために、プリンス、春のバーゲン、ありますよ、とお知らせしますね。
イベント盛りだくさん、新しいお店もオープンして、リピーターの方々も楽しめそうです。地元住民の方も、地の利を活かして(?)、朝一番に駐車場に車を入れてしまったらいかがでしょうか。
より詳しい情報は、
こちらをクリックしてくださいね。
ときにはホワイト・デイな気分で★
March 13, 2009
どうも、ハートマークばかりが目に入るわっ。
と思ったら、ホワイトデイ・ギフトフェアなるものが繰り広げられていました、プリンス。
バレンタイン・デイの返礼としてのホワイト・デイ。
そんなハートマークめいたイベントから、ぽいっ、と放り出されてしまったのは、いつのころだったでしょうか。
失われたあんなときこんなときを、思い出しながら甘いモードのプリンスを歩きます。
★「ベターリビング」にて、この感覚は、さらにあおられました。
だって。
店内に入って、すぐに目に飛び込んできたのがこれなんですから。
「好きって素直に言えない……そんな時はメッセージキャンドル」
いま、そっとつぶやいただけで、どこかからチョップが飛んできそうです。そんな人格にいつからなってしまったのでしょうか……。
さて、このメッセージキャンドル。
キャンドルの炎が甘くゆれて、そして、だんだんと何かが浮かび上がってきます。
……。
なにかの言葉のようです。
……。
いま、はっきり見えました。
「I LOVE YOU」
ああ。なんだかせつないです。
……。
もうこうなったら、真赤なハート型のキャンドルでもなんでも贈り合って、盛り上がっていただきたいものです。
見ているだけで、(私の場合は)失われた青春の、あれこれにひたれた、そんなベターリビングの甘い甘い一角でした。
次、まいりましょう。
★「カドカド」、ここのチーズケーキは、我が家のお気に入りで、個人的によく利用します。
メッセージキャンドルもよいけれどホワイトデイ、こってりと美味しいチーズケーキなども喜ばれるのではないでしょうか。
私が訪れたときも、女性ばかり4人のグループが、試食のベイクドチーズケーキに、
「おいしい!」
「おいしい!」
「すっごくおいしい!」
と感動していました。
新しいのも見つけました。「ハニー・マスカルポーネ」。
蜂蜜とマスカルポーネ……ぜったい美味しそうです。
それに、この外観がそそります。頬張りたいです。
ところで「カドカド」という、とってもキュートな名前は、Cadeau=「贈り物」というフランス語からとられていました。
お店の正面にある、カドカド物語。クリーミーな黄色に白いタイル、好きなデザインです。
カール・ラガーフェルドの挑発◆
March 9, 2009
1971年に、ガブリエル・シャネル(ココ・シャネル)が亡くなりました。
偉大なシャネルのいない「シャネル」は元気がありませんでした。
シャネルという伝説的人物の後を引き継ぐということ、確固としたスタイルが確立している後を引き継ぐことは、並大抵ではないのです。
1983年、カール・ラガーフェルドが「シャネル」に入りました。「シャネル」は再生しました。
「一部の金持ちのマダムたちのシャネル」を一気に10歳以上若返らせて、ジャーナリストたちの度肝を抜いたのです。以来、注目を集め続けています。
カール・ラガーフェルドは、1938年生まれのドイツ人です。
16歳で国際コンクールのコート部門で1位を獲得、その才能を世界に宣言します。(同年のドレス部門1位はイヴ・サンローラン)。
バルマンやパトゥの店で働いた後、フリーランサーとなり、クロエ、フェンディなどの各メゾンで才能を試し始めます。
デッサンができて、カットもできて、すべてに万能なデザイナーです。
さらに個性的で論理的。
伝説と化しているココ・シャネルについても、過剰に崇拝することなく評価します。
また、生前、面識がなかったことも幸いして、ある意味、ココ・シャネルから自由でもあります。
彼の「シャネル・スタイル」に関する考え方ははっきりしています。
「シャネルを賞賛するあまり、尊敬するあまり、シャネルの服の発展を拒否するのは危険だ。シャネルの最大の功績は、その時代の要求に女を合わせつつ、服を創造したことだ」
「メゾン・シャネルがほかのメゾンと比べて存続できる理由はいくつもあるが、そのひとつは、彼女の精神的遺言が、来るべき時代のモードに、容易に適応するからだ」
けれど「ミニ・スカートは?」
……ガブリエル・シャネルは、「膝は関節よ。醜いわ。絶対見せちゃダメ」と言い、膝丈ぎりぎりラインを固守していたのです。「シャネル・レングス」と言われるほどに。
晩年のインタビューでも、ミニについて、「大嫌い。慎みがなくて醜いわ、どうして女性が着るのかわからない。挑発的で愚かさの極みというものでしょう」と言っています。
これに対してもカール・ラガーフェルドは明確です。
「シャネルはミニスカートを断固拒否したが、あの頃の女たちの膝は見せられるものではなかったからだ。今日の若い女たちは充分に美しい膝を持っている。第一、1910年代、20年代にシャネルがした服の提案は、今日のミニスカートみたいなものだった」
動じない自信家のカール・ラガーフェルド。
写真や音楽方面でも活動し、他店のデザイナーも兼任して、ファッション界のマルチタレント、スーパースターとして活躍しています。
そんな彼について、「器用貧乏、才能を切り売りしている、三宅一生やサンローランのように女性の生き方まで変える力はない」と、言う人もいます。
けれどこれらの批評にも動じません。
「現在は、もはやココ・シャネルの時代ではない。ファッションも美しさの基準も完全に変わってしまった。私はゲーテの“過去の拡大された要素からよりよい未来を作る”という言葉を考えながら新しい仕事に取り組んでいる」
自信たっぷりです。
そんな彼の最新コレクション(2009年春夏)は、白と黒の2色だけで華麗な世界を作り出しています。
……白と黒……、これはココ・シャネルが好きな色でした。
ご興味ある方は、こちらからどうぞ。
参:「シャネル 20世紀のスタイル」、「世界のスターデザイナー 43」 「エル・ジャポン 2009年4月」
華やかなるレオナール★
March 6, 2009
映画「パリ、恋人たちの2日間」が公開されたのは、昨年(2008年)の春でした。
ジュリー・デルピーが監督と主演、ということで、公開を待って映画館へかけつけました。
映画のポスター等でジュリーが着ている美しいワンピースは、レオナールのアンティーク。
このときから、私のなかで「レオナール=かなりマダ~ム」は成り立たなくなりました。(実際は日本での映画公開以前から、若きセレブたちがレオナールを着始めていたのですが、私は知らなかったのです)。
森泉さんが(デザイナー森英恵のお孫さん)、レオナールの日本におけるブランドアンバサダー(親善大使)になったことの影響は大きいようです。
「みんなと同じ格好はいやよっ」的な自己主張の強い若い女性に支持されているようです。
こちらは黒谷友香さん。
さて。
レオナールの魅力はなんといってもプリントの芸術的な美しさにあります。
その美しき世界へ、軽井沢から出ることなく浸れてしまうという……ということで、出かけました。
ニューイースト ガーデンモールの「レオナール」へ。
「伝統あるブランド特有の品格がある」。
これがショップに足を踏み入れたときの第一印象。お店の方の洗練された対応、たたずまいが、さらにその印象を強めました。
いろんな意味で、いまのところ、私にとってのレオナールは、もっぱらハンカチです。
私自身は黒い服ばかりなのですが、だから、ハンカチはものすごく華やかなのを持ちたくなる。
レオナールのは広げて眺めていたくなるほどに美しいので、好きなのです。
先日、「好きだわ」と思っている女性のお誕生日のプレゼントに、レオナールのハンカチをプレゼントしました。
その方は、服装もメイクもひかえめなのですが、「そんな彼女が、レオナールのハンカチをバッグから取り出したなら効果的に違いない」と思い、贈りました。
(もちろん、このコラムで紹介したのヴァレンティノの言葉に影響をうけてます)
さて。
店内には、いくつか、「着てみたいな」と思うものがありました。
たとえば、こんなのとか↓
このコート↓とか。(実物の色彩はこんなものではありません。もっと綺麗)
そして、お店の方にカタログを二冊いただいて、今、机の前に飾って楽しんでいるのです。
家庭優先のデザイナー、シビラ◆
March 2, 2009
「乾燥した赤土色」や「くすんだオリーブ色」の色彩。
「刺繍」「レース」などの伝統的な手仕事の風合い。
一見しただけで「スペイン!」を思わせる、それがシビラの服です。
15年くらい前、シビラのパンツスーツを買ったことがあります。
まさにくすんだオリーブ色でしなやかなライン。
気に入って、色んなところで着ていたものです。
このスーツ、当時の私には(今もそうですが)、けっして安価ではなかったから、即購入を決めたわけではありません。試着の後、「とても気に入った!」「でも高いなー」と、もじもじしていました。
そんな私にシビラの店員さんは言いました。
「これはシビラという、スペインの芸術家の作品なんです。それを身にまとえるって素敵ですよね」
ああ……。
「スペインの芸術家の作品」……。
当時は(今もそうですが)、ピカソ、ダリ、ガウディといった「スペインの芸術家」についていろいろと勉強し、憧れていたものですから、この店員さんの言葉で、ノックアウト、購入を決めたというわけです。
その後、「Sybilla(シビラ)」は、若い年齢層向けの「Jocomomola(ホコモモラ)」のラインを打ち出しました。
ぜったい私よりもひと回り下の年齢層に向けているはずなのですが、ふらふらっと引き寄せられてしまうのは、その色合いやデザインが、どこかノスタルジックでそそられるからです。
ちょうど数日前のこと。
娘と二人で出かけたのですが、「おでかけだからおしゃれをしたい」という娘にホコモモラのボレロを貸しました。
シルクとアンゴラなので手触りが最高で、よく着ています。
このボレロ、袖は私には五分丈ですが、娘には十分丈でちょうどいい。
ボレロの前を、ブローチでとめたら、すごくいいかんじ。
私よりしっくりきているように見えます。
娘は十歳だから、ターゲット外とは知りつつも、なぜか強烈に、
「やはりホコモモラは私の年齢層ではないのだな」
と実感してしまいました。
けれど悔しいので、登場回数の少ないもういっこのホコモモラ、オリーブグリーンのコートを着て対抗しました。
……。
以上、私のささやかなシビラ&ホコモモラ小話でした。
さて、「スペインの芸術家」シビラですが、スペイン人ではありません。ちょっとびっくりです。
父親はアルゼンチン、母親はポーランド人、生まれはニューヨークで、七歳のときにスペインに移住したのです。
デビューは1988年のミラノコレクション。25歳の新人に向けられた賞賛と驚嘆の拍手は、ファッション界にゴルチエが登場したときの衝撃を思わせるものでした。
ところが、シビラは貪欲に作品を発表し続ける他のデザイナーとは違っていました。
「最近結婚して気がつきました。ファッションはある意味で狂気の世界です。
一度成功しても、半年ごとにその成功を塗りかえていかなければならない。
そのためには、一ヶ月に20回も飛行機に飛び乗らなきゃならない。
私には、仕事の栄光より、よい母であることのほうが大切に思えるの」
「小さいときに母を亡くすと、母の存在は、子供の残りの生涯に生きていたとき以上に強いものとして残ります。
母親のエッセンス、力、理想が子供に深く浸透します。
少なくとも、私の場合はそうでした」
そんなシビラのやり方に、苛ついて離れる企業もありましたが、静かに支え続ける企業もありました。そのひとつがイトキンです。
シビラは「日本の企業と仕事をするのが好き」と言います。その理由は、「彼らがクリエーティブであることを尊重してくれるから」。
シビラが「狂気の世界」と言った、めまぐるしく移り変わるファッション業界にあって、「家庭優先」を貫くシビラ。
「狂気の世界」にあって、「より狂気なもの、より狂気的な生き方」を目指す人は、ある意味、「凡庸」なのであって、シビラのような人を本当の意味で、「反逆児」というのではないか。
私はそのように思い、シビラのことをとても好きだな、と思うのでした。
そんなシビラの理想の服は次の通り。
「理想の服というのは、それを着る女性に安心感を与え、ある種の武器になるような。
その服を着ていると、男性が足元にひざまずくような、しかも同性の女性をも魅了するような」
参:「世界のスターデザイナー 43」
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